2011年9月2日金曜日

丸谷才一『ロンドンで本を読む』

丸谷 才一
マガジンハウス
発売日:2001-06


イギリスの雑誌に掲載された書評の名品を訳して集めた本。

編著者の丸谷は『文章読本』で、込み入った内容を明晰な文体で伝えているために、その内容を自らの知性の所産であるかのように勘違いさせるような文章があると言っている。この本の何編かには確かにそんな気配がある。
読んだだけで頭がぐっとよくなる(気がしてしまう)し、相当な読書家に変身できた(という錯覚に襲われる)。

取り上げられている本はクンデラやナボコフなどの小説を中心に『ホーキング、宇宙を語る』まで、果てはマドンナ写真集なんてものまであって笑ってしまった。

それにしても丸谷才一には恐れ入る。
サイデンステッカー訳『源氏物語』の書評につけた解説で、イギリスの経済新聞がプルーストやジョイスを取り上げることについて、「よく言えば文学を愛しているし、悪く言えばスノッブ的」と評価した上で、
「しかしスノッブ的なものが社会にない限り、文明は高度なものになり得ないだらう」
とは、よくもここまで言ったもんだ。ごもっとも。

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